2011年10月2日日曜日

会報かわうそ46号 2011年8月22日

会報 かわうそ 46号
       [発行責任者] 
         清流球磨川・川辺川を
         未来に手渡す流域郡市民の会
         共同代表 緒方俊一郎 岐部明廣
         熊本県人吉市九日町36-3F 
         2011年8月22日発行 TEL/FAX0966-24-9929

◆五木ダム建設中止へ!
 蒲島郁夫知事は7月20日、県営五木ダム建設中止の方針を明らかにしました。
 熊本県は中止の理由を「2004年から4年連続で発生した大雨による増水によってダム建設予定地下流の河床が下がり、洪水が起こる可能性は極めて低くなっているため」と説明しています。蒲島知事は白紙撤回表明した川辺川ダム同様、球磨川水系のダムによらない治水を追求する意向です。
 五木ダムは、旧川辺川ダム建設予定地の上流約20kmに計画された、高さ61mの巨大な穴あきダムでした。川辺川ダムにたまる堆砂を軽減させるために、ダムの高さ61mのうち40mが土砂で埋まってしまうという計画でした。
 建設予定地の五木村上荒地は地質が非常に悪く、ダムをつくれば非常に危険であること。ダムは水質日本一の川辺川の清流を破壊すること。穴あきダムにたまった土砂が流れ出し、長期にわたり川を濁すこと。ダムによる治水には限界があることなどを理由に、私たち「手渡す会」は一貫して五木ダムに反対してきました。蒲島知事の英断を、私たちは高く評価します。
 蒲島知事は7月26日、県公共工事再評価監視委員会に対し、県営五木ダムの建設中止を諮問しました。年内の答申を受けて、蒲島知事が最終判断することになります。
               熊本日日新聞 2011.7.20夕刊一面


          五木ダム予定地現地調査 2011.3.20


◆手渡す会・2010年11月~2011年8月の出来事
10.12. 5 集会「五木ダムもいらん~清流・川辺川を未来に手渡そう~」を開催(相良村体育館100名参加)
  12.14 「五木ダム建設中止を求める要望書」を熊本県あてに提出。
11. 2.17 「五木ダム建設計画に関してのお願い」を熊本県あてに提出。
  3.20 五木ダム現地調査(参加者30名)
  3.30 「五木ダム・路木ダム・立野ダム予算を東日本大震災の復興に回すことを求める要望書」を熊本県あてに提出。
  4.24 人吉市長に川辺川ダム反対の田中信孝氏再選
  7.20 蒲島知事、県営五木ダムの建設中止を正式表明。
  7.28 国土交通省の調査で川辺川が5年連続で水質日本一。
  8. 1 球磨川漁協が瀬戸石ダムの水利権更新に反対決議。
  8. 8 「五木ダム建設中止の方針表明に関してのお礼とお願い」を熊本県あてに提出。
              2011年新年会(青井神社)

◆ダムのない川と清流を未来に手渡していくために
 古代の文明のひとつであるメソポタミア(現在のシリア、イラク近辺)文明の遺跡からは多くの粘土書板が出土していますが、その中に「ギルガメシュ叙事詩」という神話と伝承が混在したような物語があります。ギルガメッシュとは半神、半人の英雄で、その英雄の物語が楔形文字で粘土板に書かれているそうです。
 その中に森を大規模に伐採した話と、大洪水に見舞われた話があります。二つの話は独立していますので、森を切ったら洪水が起きるという因果関係を明らかにするような記述ではありませんが、わざわざ後世にまで残すような出来事であったのでしょう。太古の人々は森と水の関係を正しく認識していたのでしょうか。多くの文明が、その源流に森を喪失したことにより崩壊しているように思えます。
 私たちの母なる清流球磨川にもまだまだ多くの難問が山積しています。放置人工林や大規模伐採、無意味な多くの砂防ダムや林道造成など、河川環境の悪化や水害の助長となるこれらに対処していかなくては、滅び去った文明と同じ運命をたどることになるやもしれません。
 私たち「手渡す会」は1993年の創設以来、18年間にわたり清流を未来に手渡すための活動を継続し、川辺川ダム中止、荒瀬ダム撤去、五木ダム中止を勝ち取りました。瀬戸石ダム水利権更新は2014年です。
 私たちが望む、豊かな清流を守り未来に手渡すために、これからも皆様ひとりひとりのご協力をお願いいたします。(事務局長 木本雅己)


◆人吉市長にダム反対の田中信孝氏再選!
 4月24日に投開票された人吉市長選挙で、「手渡す会」も推薦した田中信孝さんが再選されました。
 田中市長は、川辺川ダム反対の圧倒的な市民の声を真摯に受け止め、2008年9月に川辺川ダム反対を表明。その後の蒲島知事の川辺川ダム反対表明に大きな影響を与えました。
 田中市長は、選挙期間中の演説の場等においても、「清流を未来に手渡す」ことに関して、私たちと全く同じことを述べておられました。
 これまで川辺川ダム建設促進の旗頭的な立場を続けてきた、前市議会議長の大王英二氏に5000票以上の大差をつけての当選でした。今後も清流を守るためにがんばってほしいと思います。

              熊本日日新聞 2011.4.25


◆骨抜きとなってしまった「川辺川ダム建設促進協議会」
 川辺川ダム建設促進協議会(会長・柳詰恒雄球磨村長)の定期総会が、7月8日に人吉市で開かれ、ダムをめぐる状況変化を受けて昨年度に引き続き「ダム建設」から「ダム関連」に文言を変え、国などへ事業予算確保や特別措置法整備、球磨川流域の抜本的治水対策を求めていくことを確認しました。
 同会は、球磨川流域12市町村長で構成。そのうち、ダム反対の立場から2年前に脱会表明し、負担金も未納の徳田正臣相良村長はことしも欠席しました。また、ダム建設の最大の「受益地」とされていた八代市長も、人吉市長も、川辺川ダム反対の立場で、川辺川ダム建設促進の立場の首長は表面上はいなくなりました。
 10数年前、福永浩介人吉市長(当時の会長)を筆頭に、全ての流域の首長が強力に川辺川ダム建設促進を唱えていたころのことを考えれば、隔世の感があります。


◆球磨川漁協が瀬戸石ダムの水利権更新に反対!
  ~瀬戸石ダム水利権更新は2014年です~
 球磨川漁協は8月1日、人吉市で臨時総代会を開き、電源開発(株)の瀬戸石ダムについて、2014(平成26)年3月末で期限切れとなる水利権更新に同意しないとする議決を、賛成多数(賛成86人、反対2人)で可決しました。
 瀬戸石ダムは、熊本県が撤去を決めた荒瀬ダムの約10km上流にある、高さ26mの発電専用ダムです。1958年から運転を開始しましたが、同ダムにより半世紀以上アユは自然遡上ができず、球磨川の漁業に大きな損失を与えてきました。
 また瀬戸石ダムは、ダム湖周辺の洪水水位を押し上げ、ダムの底には土砂やヘドロがたまり、水質汚濁など環境にも悪影響を及ぼしてきました。
 瀬戸石ダムがなければ、洪水にたびたび襲われるダム湖周辺の地域は、洪水の水位がぐっと下がります。九州山地に降ったきれいな水と森林の栄養がそのまま八代海まで流れ、川も海も再生できます。
 漁民とともに、私たち住民も今こそ瀬戸石ダム撤去の声を上げる時です。水利権更新の2014年、3年後がダム撤去の最大のチャンスです。荒瀬ダムに続き、瀬戸石ダムも撤去し、美しい昔の球磨川を取り戻しましょう!


◆編集後記 
 今回の大震災で、想定値をもとにした災害対策の危うさをまざまざと感じました。被災した三陸海岸の多くの地域は、世界的にもまれな高さと厚さを誇る防潮堤で守られていました。しかし、大津波はその防潮堤をはるかに乗り越え、多くの自治体が壊滅的な被害を受けてしまったのです。わが熊本県は、路木ダム、立野ダムなど治水を目的としたダム建設計画をいまだにおし進めています。ダムに頼る治水は、想定以上の洪水には対処できません。想定以上の災害にも対処できるようなダムなし治水対策に改めるべきです。また、大震災の災害復旧には膨大な予算が必要となります。ムダなダム建設をはじめ、現在日本中に存在する不要不急の公共事業を全て凍結して、大震災の復興資金に投入すべきです。そうすれば、被災した方々も、多くの国民から支援されているという気持ちになられるに違いありません。(N.O.)

会報かわうそ45号 2010年11月15日

会報 かわうそ 45号
            [発行責任者] 
             清流球磨川・川辺川を
             未来に手渡す流域郡市民の会
               共同代表 緒方俊一郎 岐部明廣
               熊本県人吉市九日町36-3F
               TEL/FAX0966-24-9929
               2010年11月15日発行


◆川辺川ダムは中止でも五木ダムは復活か?
 五木ダムは、旧川辺川ダム建設予定地上流の五木村上荒地に計画された、高さ61mの巨大な穴あきダムです。川辺川ダムにたまる堆砂を軽減させるために、ダムの高さ61mのうち40mが土砂で埋まってしまうという計画です。1969年に工事に着手されましたが、本体工事は長年凍結状態が続いてきました。
 建設予定地の五木村上荒地は、地質が非常に悪いことで有名です。ダムサイト予定地には断層が何本も走り、周辺は崖の崩落が続き、崩れた土砂で旧道は完全に埋まっている状態です。ダムサイト予定地にある上荒地トンネル内部にも大きな亀裂が無数に発生しています。このような場所にダムをつくれば非常に危険であることは、現地を見れば一目でわかります。
 五木ダムは洪水調節を目的としていますが、洪水調節容量は220万㎥であり、旧川辺川ダム(8400万㎥)の約40分の1しかありません。
 穴あきダムにたまった土砂がとけ出し、長期にわたり川を濁すことは、川辺川上流の朴の木ダムを見ても明らかです。
 蒲島郁夫知事は10月13日、五木ダムを県公共事業再評価委員会の審議対象とする方針を明らかにしました。五木ダムは効果がないばかりでなく、非常に危険で、川辺川の環境にも大きなダメージを与えます。同封の集会に、是非ご参加ください。




           五木ダム建設予定地(五木村上荒地)

◆手渡す会・2009年10月~2010年10月の出来事
09.10.20 球磨川流域の「ダムによらない治水を検討する場」第5回会合。代替治水案を国土交通省が提案。意見書を提出。
 11.14 川辺川ダム中止・荒瀬ダム撤去を求め、八代市で県民大集会。(八代市厚生会館900名参加)
  12. 5 手渡す会総会・忘年会(くま川ハウス30名参加)
  12.20 荒瀬ダム撤去を求める住民大会(坂本公民館250名参加)
  12.22 球磨川流域の「ダムによらない治水を検討する場」第6回会合。国が提案した非ダム案でも洪水水位が大幅に低下。意見書提出。

10. 1.10 川辺川ダム反対諸団体の合同新年会。(青井神社100名参加)
  1.14 前原誠司国土交通大臣が「荒瀬ダム水利権更新は3月末の期限までに許可を出せない」と発言。蒲島知事は「だまし討ちにあった」と発言。
  2. 3 蒲島知事、荒瀬ダム撤去2012年度着手と再度方向転換。
  3.23 蒲島知事、2012年までの荒瀬ダム発電継続を断念。
  4. 1 荒瀬ダム水利権失効。荒瀬ダムのゲート全開。
  7.30 川辺川が1級河川水質ランキング4年連続日本一に。
  8.29 第14回川辺川現地調査。シンポジウムに200名参加。
 10.13 環境に配慮した川辺川の治水を求める意見書を国・県に提出。
           第14回川辺川現地調査 2010年8月29日


◆役員体制について(2009年総会の報告)
 2009年12月5日、「手渡す会」の総会をくま川ハウスで開きました。政権交代やダムによらない治水の検討など、新たな局面を迎えたダム問題に対応していくため、役員体制の強化、会則の一部変更などが提案され、いずれも承認されました。
 役員体制では、これまでの会長、副会長を廃し、会長に代わって「共同代表」としました。共同代表に前会長の緒方俊一郎さん(相良村)と前副会長の岐部明廣さん(人吉市)の2人。事務局長には手渡す会の発足以来努めてきた重松隆敏さんに代わり木本雅己さん(人吉市)、事務局次長に市花保さん(球磨村)、田副雄一さん(相良村)、緒方紀郎さん(熊本市)、会計に川辺敬子さん(人吉市)、監事に黒田弘行さん(人吉市)、帯金征一郎さん(相良村)、名誉顧問に重松隆敏さん(人吉市)、大山次郎さん(人吉市)、山下春男さん(人吉市)が選出されました。
              球磨川ハウスの定例会にて


◆2010年総会・忘年会のお知らせ
 12月13日(月)午後7時よりくま川ハウスで、2010年総会と忘年会を開きます。多数のご参加をお待ちしております。一品持ち寄り大歓迎です!


◆国交省「保水力」を都合よく改変
 10月24日の毎日新聞1面トップで、国交省がダム建設を推し進めるために川の治水計画の妥当性を検証する際、流域の保水力を示す「飽和雨量」の値をわざと変えてつじつま合わせをしていたことが明らかになりました。
 各地の住民団体は、戦後の拡大造林で山の多くがはげ山だった昭和30~40年代と比べ、木が成長した今は保水力が向上したとして、それを治水計画に反映させるよう主張してきました。
 これに対し国交省は、「はげ山」でも「豊かな森林」でも保水力は変わらない。治水計画策定時の計算式は近年の洪水に当てはめても実際に流れた量と合致するとして「保水力は不変」と反論してきました。
 10月12日の衆院予算委員会で、河野太郎氏(自民)の質問に答え、馬淵澄夫国交相が八ッ場ダムで揺れる利根川の治水を検証する際に用いた「飽和雨量」の値を初めて公表し、国交省のごまかしが明らかになりました。「検察のフロッピー書き換えか、それ以上の犯罪が行われている」と河野氏はブログに書いています。
 同じことが全国の河川で行われてきたと、国交省近畿地方整備局の元河川部長、宮本博司さん(57)も証言しています。2001年からの住民討論集会で私たち住民が主張してきたことが、実証されたといえます。
 40年以上も昔の山の状態をそのままあてはめた、基本高水流量をもとにした国の治水計画は、ダムを造るためのまやかしです。今後の治水は、どんな洪水が来ても被害が軽減できることを前提にすべきです。
  ※以上は、毎日新聞記者・福岡賢正さんの記事等を参考に書いたものです。


◆会計報告(2009.9.22~2010.9.30)
│収入の部 │ 金額 │備考 │
│繰越金 │ ▲438,500│
│年会費・カンパ │ 992,023│グッズの売上、雑収入なども含む│
│合計 │ 553,523│

│支出の部 │金額 │備考 │
│郵送費 │ 140,464│会報発送、資料発送 │
│交通費 │ 109,800│高速料金、ガソリン代など │
│事務用品費 │ 18,645│紙代、文具、印刷機インク代など│
│事務所維持費 │ 628,279│家賃、電気、電話など │
│その他 │ 105,294│会場費など │
│合計 │ 1,002,482│

(収入)553,523-(支出)1,002,482=▲448,959

◇「手渡す会」は、皆様方の年会費とご寄付のみで運営しております。年会費払込用紙(一口1000円)を同封させていただきました。今後とも、清流を未来に手渡す活動にご協力いただければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。



◆荒瀬ダムに続き、瀬戸石ダムも撤去しよう!
 1955年、球磨川下流に荒瀬ダムが建設されて50年以上、住民はダムによる水質汚濁や水害被害などに悩まされ続けてきました。荒瀬ダム撤去は2002年、地元の要望を受け、当時の潮谷義子知事が表明。ダム撤去の全国初の試みとして注目されました。
 ところが2008年、蒲島郁夫新知事は独断で荒瀬ダム存続に方向転換し、大きな混乱を引き起こしました。しかしながら地元の強い要望を無視することはできず、蒲島知事は今年2月、荒瀬ダム撤去に2012年度に着手すると再度方向転換しました。
 4月1日、荒瀬ダムの水利権が失効し、荒瀬ダムはゲートを全開にしました。その後、球磨川の水は澄み、旧ダム湖の底から美しい瀬がいくつも出現しています。ゲート全開直後は河原もヘドロに覆われていたのが、梅雨の雨に洗い流され、ヘドロも全くなくなっています。ヘドロがたまって歩けなかった八代海の干潟にも砂が戻り、タイラギやマテガイなど多くの生き物も戻ってきました。
 荒瀬ダムの上流にある電源開発の瀬戸石ダムの水利権更新も2014年に迫っています。4年後がダム撤去のチャンスです。荒瀬ダムに続き、瀬戸石ダムも撤去し、美しい昔の球磨川を取り戻しましょう!


       旧荒瀬ダム湖をカヌーで下りました 2010年8月25日
                                  
◆編集後記
 先日、4月からのゲート全開により川の流れ復活した、かつて荒瀬ダム湖だった球磨川をカヌーで下りました。半年ほど前までここがダム湖の底だったとは考えられないほどの美しい流れでした。たくさんの水生昆虫もいて、自然の回復力に驚きました。しかし、最後の約3kmはダムの基礎部分(高さ約10m)があるため、いまだに水がたまっており、よどんで濁ってました。一日も早い荒瀬ダムの完全撤去が望まれます。◇蒲島知事は、建設する目的の全くない路木ダム(天草市)の本体工事を強行しました。国や県は、凍結状態の五木ダムを県公共事業再評価委員会にかけて復活させようともくろんでいるように思えます。ここで五木ダムの息の根を止めなければ、ゾンビのように生き返る可能性が十分考えられます。同封の五木ダム集会にご参加ください。(N.O.)