2008年10月31日金曜日

会報かわうそ18号 1997年12月1日発行

会報 かわうそ 18号   
         [発行責任者] 
          清流球磨川・川辺川を
          未来に手渡す流域郡市民の会 
          会長 池井 良暢 熊本県人吉市新町16番地
            1997年12月1日発行 TEL・FAX0966-24-9929


◆今こそ川辺川ダム建設中止を!
 全国のダム建設見直しを進めてきた建設省は今年、全国で18のダムを建設中止や休止とすることを発表しました。長良川河口堰の運用開始を決めた際、当時の野坂建設大臣が「国家が国民の血税を使って行う公共事業に間違いはない」と言い切ってから2年、建設省の言う事は180度変わったのです。
 川辺川ダムによる利水事業は不要として裁判所に訴えた農家(原告団)は、9月3日に対象農家の過半数を越える2060人に達し、同事業は実質的に実施不能の状態に追い込まれています。また治水面でも、ダム放流による洪水や市房ダムとの統合管理、基本高水流量の過大設定などの問題点が、最近の各政党の調査でもますます浮き彫りにされています。
 このような目的が失われた川辺川ダム建設に、今後2000億円以上の私たちの血税がムダに使われるのです。次に中止すべきダム建設は、川辺川ダムです。
 五木村にとっても、村の中心地と広大な自然環境がダムに沈んでしまっては、今後の地域振興に限りなく大きなダメージを与えるのは明白です。また建設省は、中止するダム建設に投入してきた国の補助金について、地元自治体に返還を求めない方針も固めました。「立派な道路と代替地ができて、ダムはできない」のが、五木にとっても最良の道なのではないでしょうか。
 川辺川ダム計画は、水没によって生活権を奪われる五木に30年以上にわたる苦難を強いてきました。今後、ムダなダム建設に使われる私たちの血税は、五木村の地域振興に投入すべきです。これだけ条件が整ってきた今こそ、川辺川ダム建設は中止させるべきです。         第1回川辺川現地調査 川辺川河畔交流会
         1997.8.30 緒方撮影


       第1回川辺川現地調査 人吉市内パレード
        1997.8.31 緒方撮影


◆手渡す会・7月~11月の出来事
97. 7. 5 討論「九州の自然を壊す公共事業」で川辺川ダムも報告(博多)
     博多・天神で川辺川ダム問題のビラ配布。
  7. 9 矢上代議士の「川辺川ダム事業計画の見直し」要請に建設省は
      「見直さない」と回答。
  7.20 シンポジウム「諫早湾のギロチンが川辺川を狙っている」
  7.22~ 民主党が川辺川ダム問題を現地調査。
  8.10 ダム審答申1周年記念シンポ(人吉商工会議所80人参加)
  8.27 建設、農水、大蔵、環境の各省庁に川辺川ダムと利水事業見直し要請。(東京)
  8.30~ 川辺川現地調査会、研究討論会(JA球磨人吉支所200人参加)
  9. 1~ 共産党が川辺川ダム問題を現地調査
  9. 3 川辺川利水裁判第4回公判。原告と補助参加で2060人に。
  10. 4 建設省、2年ぶりに川辺川ダム事業説明会。住民から意見相次ぐ。
  10.18 中島重旗氏(熊大名誉教授)をまねき学習会。「ダムができれば川はどうなるか」(紺屋町会館30人参加)
  10.19 川辺川のアユ食い大会(中川原公園60人参加)
  11. 3 横山隆一氏(日本自然保護協会)を招きクマタカ学習会(人吉カルチャーパレス30人参加)
  11.8,9水源連大会(神奈川県)に参加。
       第1回川辺川現地調査 パネルディスカッション
        1997.8.31 川辺川現地調査報告集より


        第1回川辺川現地調査 パレードとカヌーデモ合流交歓
         人吉市水の手橋
         1997.8.31 川辺川現地調査報告集より


◆連続シンポジウム、いずれも大成功! 
◇7/20 人吉カルチャーパレスにて
 「諫早湾のギロチンが川辺川を狙っている」と題し、ムダな公共事業と環境破壊を問うシンポジウムを7月20日に開催し、約300名の参加者を得る事ができました。
 各パネラーは、「この事業でメシが食えるのは役人と土建業だけ。川辺川ダムを造らんがために農家をダシにしている」(川辺川利水裁判原告団長の梅山究さん)、「官僚は情報を隠すし、何を言っても通らない。諫早や川辺川の問題は、民主主義の問題だ」(諫早干潟緊急救済本部の山下弘文さん)、「自然破壊とは何かと何かのつながりを分断すること。ダムが建設されることで何が分断されるのか考えてみては」(日本自然保護協会の横山隆一さん)などと講演されました。
 後半は、熊本県弁護士会の竹中敏彦さんをコーディネーターにパネルディスカッション。最後に「ムダな巨大公共事業に地域住民の声を正しく反映させ、その必要性を科学的に検証し事業計画を見直す事を関係機関に求める」大会アピールを採択しました。
        シンポジウム「諫早湾のギロチンが川辺川を狙っている」
          1997.7.20 人吉カルチャーパレス 緒方撮影

        シンポジウム「諫早湾のギロチンが川辺川を狙っている」
         1997.7.20 人吉カルチャーパレス 緒方撮影


◇8/10 人吉商工会議所にて
 川辺川ダム事業審議委員会の答申1周年に合わせ、川辺川ダム事業とダム行政を考えるシンポジウムを8月10日、人吉商工会議所で開催しました。わずか2週間という短い準備期間だったにもかかわらず、会場は約80名の参加者で満席となりました。
 各パネラーは、「ダム審は住民の意見を取り入れる場でも、ダム計画の妥当性を科学的に検証する場でもなく、行政側の主張のみを取り入れ、事業継続を表明させる場でしかなかった」(手渡す会・原豊典さん)、「治水計画の問題点を指摘したが、取り上げられなかった」(ダム審に参考人として出席した毎日新聞記者・福岡賢正さん)、「ダムサイト予定地は地質に問題がある」(元熊大教授・松本幡郎さん)などと指摘。会場からも活発に意見が出されました。
 なお、開催に先立ち「手渡す会」などの地元市民グループは、建設省に担当職員の出席を求めましたが、建設省側は出席を拒否しました。
        川辺川ダム事業とダム行政を考えるシンポジウム
         1997.8.10 人吉商工会議所 緒方撮影


         川辺川ダム事業とダム行政を考えるシンポジウム
          1997.8.10 人吉商工会議所 緒方撮影



◆会計報告(97、6、21~11、20) 
収入の部      金額       備考
繰越金        443,449 
年会費・カンパ   932,636 グッズの売上、雑収入なども含む  
合計       1,376,085  
支出の部      金額       備考 
郵送費       241,068 会報発送、資料発送など  
紙代          31,174 会報、チラシ、資料など  
事務用品費      22,427 タックシールなど 
事務所維持費   438,896 家賃、電気、電話、コピー機、印刷機、水道など 
書籍購入       50,100 諫早関係、現地調査報告集など 
旅費          50,000 水源連大会、神奈川  
その他         37,665 街宣許可、旗竿、水源連会費など 
合計        871,330   
(収入)1,376,085-(支出)871,330=504,755円
■会員拡大にご協力を! 皆様方の資金面でのご協力に、厚く御礼申し上げます。今後、さらに活動を広げていくためにも、皆様のお近くの方に川辺川の事をお話しいただき、会員を1名増やしていただけないでしょうか。 年会費1000円を「郵便振替01970-1-27826 清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」までお振り込みいただいた方には、年4回程度、会報「かわうそ」をお送りします。よろしくお願い致します。


◆川辺川ダム説明会、住民の疑問相次ぐ!
 建設省は10月、2年ぶりに川辺川ダム説明会を開催した。川辺川ダム建設の「4つの目的」とされるもののうち、『発電』はダム建設により水没する、現在稼働している発電所の発電量を補うに過ぎず、『流水の正常な機能の維持』はダムのない状態が正常な川であることは明白であり、『かんがい』も、恩恵を受けるはずの農家の過半数が裁判所に異議を訴え、3つの目的は完全になくなったと言っても過言ではあるまい。残る論点は『洪水調節』だけであり、説明会もそれを中心に説明が行われた。
◇治水計画の過大な設定
 川辺川ダムは、80年に1度の確率で起こる洪水、すなわち人吉地点で毎秒7000トンのピーク流量を想定して造られるという。ところが、きちんとしたデータのある昭和29年以降、最高の流量は昭和57年の5700トン。昭和40年の大水害でさえ5000トンである。それ以降、河川改修や幼樹林の成長で洪水の起きる要因は減少しているはずである。にもかかわらず、過大な洪水を想定し、巨大なダムを造る必要はない。
◇代替案の検討も不十分
 ダム以外の5つの代替案(河川改修や遊水地、放水路など)を示し、「いずれの案よりもダム建設が最もよい」と説明していたが、それらを有機的に組み合わせれば無数の方法が考えられるはずである。「他の組み合わせ案は検討しないのか」と質問したが、検討はしないと明言した。結局、ダムを造ること自体が目的になっている。ア
メリカなどの先進国では、住民の意見をもとに何十もの案を絞り込んで行くという手法が採られているのだ。
◇市房ダムとの統合管理は不可能!
 「市房ダムとの統合管理は現時点ではできない」と建設省は明言した。
◇毎秒5160トンもの非常用放水門
 川辺川ダムには毎秒5160トンも放流できる非常用放水門があり、使用される事もあり得ることも分かった。洪水時に放流されたら下流はひとたまりもない。さらに、昭和40年水害を体験された方は「市房ダムによって引き起こされた災害だ」と
怒りを込めて述べられた。多くの疑問点を残したままダム説明会は終わった。ダム建設に対する疑問は募るばかりだ。

◆編集後記
 8月の川辺川現地調査では、各地から200人以上の参加があり、また輪が広がりました。「川辺川現地調査報告集」を、今回同封させていただきました。11月に水源連大会が神奈川で行われた際、首都圏在住の「手渡す会」会員や、川辺川ダム問題に関心を持つ方が20名近くも集まり交流会が開かれ、初代環境庁長官・大石武一さんもかけつけられたそうです。東京でも会が設立できそうな勢いです。忘年会には、世界的なダム問題ジャーナリスト、フレッドピアス氏も参加されます。本当に広がってきたなと実感できる1年でした。来年は「手渡す会」も早や6年目です。皆様、よいお年をお迎えください。(N.O.)